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イレギュラーだった。
まさか、まさかこんなことを言われるなんて。
もちろん、今までだってイレギュラーはあった。
まだ生きたい、死にたくないと泣きわめき暴れる人を泣きながら宥めたこともあった。
遺した子が心残りだと言われ、泣くその人と一緒にこれまた泣きながら子どもの行方を確認したこともあった。
このような仕事にイレギュラーは付き物だ。
案内対象が死を受け入れてスムーズに案内出来る事の方が、断然少ないと言ってもいいくらいだ。
が、しかし今回のようなイレギュラーは今までになかった。
イレギュラー中のイレギュラーだ。
元旦那の所に行きたい。
これは問題じゃない。
寧ろそんなにも強い愛に感動し、喜んでおばあちゃんを元旦那のいる所へ案内する。
問題は、別にある。
おばあちゃんの元旦那である優さんは、なんと地獄にいるそうだ。
御浄土や天国に行けるような人をそんな所へ案内するなんて。
有り得ない。
あっちゃあいけない。
最初は優さんが地獄にいる事を知らないから、そんな事が言えるのだろうと思った。
ところがおばあちゃんは、そんな事は知っていると言う。
知っているけど優さんの所へ行きたいと言う。
あっちゃいけないだろ、こんなこと。
有り得ない。
分かっているのか、このおばあちゃんは。
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