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「あのな、優さんはいわば地獄にいるんだよ。
おばあちゃんは御浄土とか天国とかそんな感じの所に行ける人なんだ。
それを元旦那がいるからって地獄に行くなんてどういうこと」
10分後、センターの情報部に優さんの事を聞いた俺は、おばあちゃんに優さんのところに行くのを諦めさせるべく話を始める。
クレーマーを宥める処理科にいたあの頃の気分だ。
「私は優さんの所に行きます。
優さんが亡くなる時に約束したの、私が死んだら優さんの所へ行きますって。
美味しいお茶を飲みましょうねって」
冗談じゃない。
地獄で美味しいお茶?
飲めるのは釜の湯位のもんだ。
しかも沸騰してる。
「あのなおばあちゃん、おばあちゃんは若い時にその優さんに置いてかれちゃったんだろう。
おばあちゃんに株の才能と人望があったからよかったけど、借金まで置いてったらしいじゃないか。
おばあちゃんと別れた後金持ちの娘と同棲、まぁほとんど結婚状態だな、あれは。
つまりは逆玉の輿だ。
しかも2年で追い出されてる。
で、色んな女の渡り鳥になってさ。
そのうえかなりのヤク中だ。
薬の為に全く有り得ないこともしたらしい。
ほんと、顔と口の上手さだけで人生渡り歩いたような男だぞ。
そんな男との約束守るなんて有り得ない」
「でも、約束は約束だから」
理解できない。
しかも何でこんなに幸せそうなんだ。
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