プロローグ

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 俺は二人がこうして生活を共にできることが奇跡だと思っている。  今では、仲のいい真央と三宮だが、昔は互いの信頼関係を修復できないと思えるぐらいに仲たがいをしていることがあった。    中学二年……すなわち三年前に話がさかのぼるのだが、彼女らはあるひとつの事柄がきっかけで関係を悪化させてしまい、互いに苦しんでいたようだ。  目の前で戯れている二人を観察していると、そんな過去が嘘臭く思えてくるのだが深く追求するのはやめよう。  そもそも俺には、これよりも気になる点がある。  三宮が真央と関わることのなかった空白の三年間、彼女はどこでなにをしていたのか。  俺はどうしても不思議でたまらなかった。  二人きりになった時に質問をしても、応じようとせずに話題を変えてくるのだ。  あからさまに怪しい。  俺の知る生徒会書記は、漫画を描くことに挫折したのちに写生を極めている。  ならば、彼女はどのようにして写生という道を見出したのか。  どうして写生をしようと決断したのか。  それがどうしても解せない俺は、いつの間にか三宮茄子の実態を知りたいと切望していた。  しかし、この願いは近いうちに実現されるものとなる。  つまるところ、俺は気づくこととなるのだ。  生徒会書記と非常勤メイドという二つの顔を持ち合わせる彼女には、多くの人間に知られるとまずい第三の顔があるということに。
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