屋上にて

2/5
前へ
/7ページ
次へ
「何を……しているんだい?」 「これを見て何をしているって聞くのかい、君は?」 僕が彼と話すのは、これが初めてだった。 僕が通う高等学校の屋上、貯水タンクで死角になっている場所。 そこに、彼は屈んで下にあるグラウンドを見ていた。表情は、夕陽を受けた長い前髪が作る影のせいで、よく見えない。 「そうだな……死のうとしているんだよ、名も知らない同級生さん」 彼がタチの悪い冗談としか思えないことを話す。僕を一瞥してタイの青色で何年か把握したようだ。目は合わせずに彼は、下を再度見やる。下を見ることに、死ぬことについての関心が強いのだろう。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加