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「君こそ、此処に何の用なんだい? まさかとは思うけれど、同じ思考でここに行き着いた同志じゃあないだろう? 教えてくれよ」
冥土の土産にと、彼は続けた。
僕は目の前にいる、僕と同級生である彼に戸惑いを覚えた。
僕には簡単に決行できないことを、恐れている様子もなく、ただ毎日を過ごすことかのように、やってみようという彼に畏れさえ抱いた。故に返事が遅れた。彼は僕が言葉を発さない理由を解したようで、独り言のように言葉を紡ぐ。
「ああ、もしかして此処は君の居場所だったのかい? それなら悪いことをした。いや、悪いことをする。でもまぁ、許してやってくれ、これぐらいの居場所なら他にも見つかるさ」
「それは別にいいけどさ」
不意に、言葉が口を衝いて出た。このまま彼のペースに乗せられたら、一つの終わりを見届けるだけになりそうだったからか。
だが、反射的に相手の言葉を遮った割に、僕はとても混乱していた。彼という人間を、人間と理解できなかったからだ。
僕のように、死にたいと思っていながら生き続けるのが、人間だと、自己正当化も含めてそう思っていた。
それが今日、いつものように退屈で何も変化がない一日を過ごし、そしていつものように屋上で風に当たり高校での一日を終えようと思って此処に来たら、これだ。
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