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「若いのに、死ぬなんて駄目だよ」
詭弁だ、嘘だ、と頭の中で声がした。目の前で死なれることが嫌だからとりあえず止めようとしただけだ。それに僕には、初対面である彼に、聞きたいことができてしまった。
彼は首肯して、謎かけをするかのように僕との会話を続ける。
「若いからなのかい? 年老いたならいいのかい? 違うだろう? 君からしたら死んでほしくない状況だから、だ。……若いのに、正直に、素直に生きないのなんて駄目だよ」
最後の言葉は僕への意趣返しなのだろう。口調を真似て、楽しそうに皮肉を述べてきた。
そして彼は、悪戯が見つかってしまった子供のように無邪気な笑顔で、こちらに背筋を伸ばして向いた。
身長は僕よりも少し大きい、180cmぐらいだろうか。夕日に照らされて分かりづらかったが髪は明るい。端正な顔つきの青年、という印象を受けた。といっても同級生のはずなのだが、その先入観があるにも関わらず、僕よりも幾つか年上と見紛うほどの存在感を放っていた。
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