第一章 別れ

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ナンパかなと思いながら声の方を見ると、占いの看板を掲げた机に座った女がイズミを見ている。 『なんだ。客引きか』 さっきはいなかったように思うが、気付かなかっただけだろうか。 イズミは占いなどに興味ない。 無視して通り過ぎようとしたイズミへ占い師は言った。 「君はこれからも事件に巻き込まれる」 イズミは自分の事を知っているのかと、占い師をよく見た。 今時こんな格好の占い師がいるのかと思った。 頭には黒いレースのベールを被(かぶ)り、口元はベールの共布(ともぬの)で覆っている。 目しか見えない上に、大量の付けまつげ、目の周囲は真っ黒いアイラインがひかれている。 そのせいで人相が分からない。 体は黒いフリルのドレスに、大判のケープを羽織っている。 ただのコスプレマニアにしか見えないが、料金を取って占うのなら、本物なのだろう。
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