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イズミはイギリス時代、本物の魔女の占い師に会った事がある。
その人は裏の老婦人の友人だった。
何故魔女かというと、裏の老婦人は魔女で、その友人だから魔女に違いないと思っただけだ。
魔女は自ら魔女とは言わない。
つまり老婦人が魔女だという事も、イズミが勝手に信じているだけで、特に確証はない。
占い師の名前は、“マダム・タラッサ”。
タラッサとは、古代ギリシャ語で海の意味だ。
とても恰幅のいい婦人だった。
彼女は紫と金色の絹のドレスを着ていた。
頭から光沢のあるチュール(六角形の網目模様の布)のベールを被っていた。
マダム・タラッサには伝統を感じさせる風格と迫力があった。
日本人がいくら真似をしても、あの味はなかなか出せないだろう。
だから目の前にいる占い師は、コスプレの偽物にしか見えない。
取りあえず、こんな寒空の下で露店を出す根性だけは認めてやろう。
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