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「あいつらを捕まえて下さい」
「君も暴力を振るっていただろう?喧嘩両成敗だ」
「五対一ですよ。正当防衛です」
「じゃあ被害届を出すかい?見た所全然怪我していないようだけど」
警官はイズミを見て、被害なしと判断している。
怪我をしていない以上、正当防衛の証明も面倒だ。
あの山道カーチェイスの犯人もまだ捕まっていない。
いろいろ忙しいので、イズミは被害届を出さなかった。
イズミが解放されると、「だから言ったでしょう」と、先程の占い師が寄ってきた。
「私が丁度通りかかったお巡りさんに伝えたの」
全部見ていたなら、イズミは悪くないと味方をしてくれてもいいのに。
「あなた、今のままではいずれ死ぬわよ」
「人間はいつか死ぬものですから」
「屁理屈言うわね」
占い師は投げやりなイズミの態度を気の毒に思った。
「私の占いの館にきなさい。もっとみてあげるから」
「わざわざ館に、ですか?」
館などと言っているが、要するに自宅へ誘っているのだろう。
『やっぱりナンパ?それともカモネギ扱い?』
いくらイズミでも、名前も顔も年齢も不詳の女の家になど行かない。
ケープとフリルで体形も分からない。
服を脱いだら男かもしれない。
これで警戒せずにいられるだろうか。
「結構です」
イズミは断わった。
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