第一章 別れ

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家に戻ると、マダム・タラッサから貰った石を探した。 物入れの奥に段ボール箱がある。 帰国時にイズミの荷物を入れた物だ。 イズミは箱を引っ張り出した。 日本へ帰ってから一度も開ける事はなかったが、誰かが開けた痕跡がある。 佐和子の事件時に家宅捜索されている。その時警察に見られたのだろう。 まるで思い出を汚された気分だ。 イズミは箱を開けて、中を見た。 今見ると、殆どがらくた。小学生だった当事は大切なものばかりだったが。 中には一見ゴミみたいなしわくちゃのキャンディの包み紙や、ノートの切れ端まである。 開いて見ると、英語でラブメッセージが書かれている。 ガールフレンドから貰って嬉しかったから、捨てずに取っておいたものだ。 従ってゴミではない。 いずれは捨てるつもりだが、今はまだ大切な思い出の品。 イズミは丁寧にシワを伸ばして、元の位置に戻した。
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