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イズミは保孝へ訊いた。
「それは・・・、何故ですか?」
保孝は一回「フーッ」と、深く息を吐き、ネクタイを少し緩め、言わなくても分かるだろうという顔をした。
それからイズミの質問に答えた。
「君はとてもいい青年だ。しかし君といると、ヒロは長生きしないような気がして、親としては不安でしょうがない。先日も危うく海に落ちて死ぬところだった。毎回このような状況になっては、親として生きた心地がしない。だから分かってくれ。ヒロを忘れて欲しい」
先日ヒロとドライブ中に、崖から車ごと転落した事を言っている。
「あれは私が無謀運転をしたくてしたのではなく、ヒロさんを危険な目に遭わせたくなくて、やむなくした事です」
結果危険な目に遭わせてしまったが。
あの後レスキュー隊に助け出されるまで、生きた心地がしなかった。
イズミは警察、保険屋の対応に追われ、さらに父の怒りを鎮めるために随分骨を折った。
木にぶつかった衝撃で車のガソリンタンクは破損し、ガソリン漏れを起こした。
ブレーキまわりもやられ、父は廃車にした。
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