第一章 別れ

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「ヒロさんは何か言っていましたか?」 保孝は険しい顔をした。 「勿論嫌だと言っている。だからこうして君に頼んだ」 保孝に別れるよう言われてから、ヒロは家で毎日泣いている。 しかし、いつかきっと納得すると父は娘を信じている。 「君には事件解決に随分協力して貰った。それなのに、こんな言葉を言わなければならないこちらも辛いのだよ」 保孝は今や名探偵と評価されている。 監獄島の事件はかなり大きくマスコミで報道された。 その中で、ペンションの事件も紹介されて、数々の事件の真相を解明した名探偵の名声を得た。 それでテレビにも出るようになった。 今や事務所には全国から事件解決依頼が殺到しているらしい。 浮気調査しか仕事が無かった頃が嘘のようだ。 数々の事件解決は、イズミの協力があったお陰だと保孝も分かっている。 それでもこうしてイズミと縁を切りたいのだから、名声よりヒロの命を選んだということだ。
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