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「一度ヒロさんと話をさせて下さい」
「すまないが、絶対に話さないでくれ。君からは連絡しない事。もしヒロから連絡があっても無視して欲しい」
話してしまえば、却って別れない意志を二人で確認してしまうだろう。
だから会わない方がいい。
保孝にきつく言われて、イズミは考えた。
『思えばヒロには何度も危険な目に遭わせた。自分と別れる事で平穏な生活を送れるのなら、その方がいいのか』
イズミは無理矢理自分を納得させた。
「分かりました。もう連絡はとりません」
保孝はホッとした。
「分かってくれて嬉しい。これからも君の活躍を期待しているよ」
その台詞はそっくりそのまま目の前の“名探偵”に返してやりたいとイズミは思った。
先に保孝が喫茶店を出た。
支払いは保孝が済ませたので、イズミは黙って喫茶店を出た。
表通りに出ると、曇天を見上げて思った。
『運命など笑って乗り越えられる女性に、いつか出会えるのだろうか』
その時女の声が聞こえた。
「そんなに怖い顔をしては、ますます運命に翻弄されるわよ」
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