第一章 別れ

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「一度ヒロさんと話をさせて下さい」 「すまないが、絶対に話さないでくれ。君からは連絡しない事。もしヒロから連絡があっても無視して欲しい」 話してしまえば、却って別れない意志を二人で確認してしまうだろう。 だから会わない方がいい。 保孝にきつく言われて、イズミは考えた。 『思えばヒロには何度も危険な目に遭わせた。自分と別れる事で平穏な生活を送れるのなら、その方がいいのか』 イズミは無理矢理自分を納得させた。 「分かりました。もう連絡はとりません」 保孝はホッとした。 「分かってくれて嬉しい。これからも君の活躍を期待しているよ」 その台詞はそっくりそのまま目の前の“名探偵”に返してやりたいとイズミは思った。 先に保孝が喫茶店を出た。 支払いは保孝が済ませたので、イズミは黙って喫茶店を出た。 表通りに出ると、曇天を見上げて思った。 『運命など笑って乗り越えられる女性に、いつか出会えるのだろうか』 その時女の声が聞こえた。 「そんなに怖い顔をしては、ますます運命に翻弄されるわよ」
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