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「ゲッ、赤男……」
良吉は嫌そうな表情で朔磨を見上げる。
対照的に朔磨は良吉を見下ろしてニヤリと口端をつり上げた。
「よぉ、チビ助に委員長ちゃん。遠くまでデートとはロマンティックが止まんねぇな」
「なっ、チビ言うな!」
「おお、怖ぇ怖ぇ」
無神経に良吉をからかっていると、刺青の男達がよろめきながら立ち上がる。
血の気が盛んな男達だが、力量が分からないわけではない。
距離を保ち、睨みながらも警戒する。
「くそ、何なんだテメェら……」
「私? ただの主婦ですよ」
「俺様はぴっちぴちのベイビーだぜ、ヒャハ」
朔磨の言葉は事情を知らない人間が聞くと支離滅裂な言葉。
千鶴はだいたい合っているが、説明不足。
その結果、
「……まさか葛城組の差し金か」
「ああ、きっとそうだ。会長がここにいるのを嗅ぎつけたにちげぇねぇ」
神宮会の敵対組織に当たる「葛城組」の組員だと誤認識される。
スキンヘッドの男が一度屋敷の中に引っ込むと、三十秒と経たない内に大勢の組員が屋敷から姿を現す。
その数は二十名。
一部の組員の手には凶器が握られていた。
「ヒャハ、随分とむさ苦しい歓迎だぜ」
「さっちゃん」
「あいよ」
千鶴に目線を向けられた朔磨は、右手で風香の腕を掴み、左手で良吉の後ろ襟を掴んで引っ張る。
「うぐ……!」
「ほれ、お子ちゃま共はすっこんでろ」
そのまま千鶴から遠ざかるように朔磨は二人を後方へと引っ張っていく。
「な、何言ってんさね! 千鶴さんが!」
「ヒャハハハハッ!」
大勢の男達に対峙する千鶴を心配する良吉だが、そんな心配を朔磨は笑い飛ばす。
「おい、チビ助。三十秒後に今と同じ台詞が言えたら一緒に心配してやってもいいぜ?」
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