罪深き男の仁義(後編)

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「まさか、あの時の約束を……」 弥彦はただただ茫然とした。 三年前に交わした約束。 三年前に起きたあの事件の後も、阪本達との約束は続いていた。 そして、彼らは今日結婚式で約束を果たす為に弥彦を待ち続けている。 ずっと。 弥彦が来ることを信じて。 「ヒャハハハ、ガキは思ったことを口にできていいもんだぜ」 「朔磨殿……」 良吉達が必死に弥彦の腕を引く最中、朔磨が口端をつり上げて不敵な笑みを浮かべる。 「ガキ共が邪魔くせぇなら俺様が蹴散らしてやってもいいぜ。もしくは」 と、親指で後方に停車している真っ赤なベンツを指差す。 「俺様のクールな愛車で式場までドライブでもすっか?」 恭也に頼まれて朔磨と千鶴はここまで来たが、けして強制的に弥彦を連れ出すつもりはない。 「弥彦さん、ここからは貴方が決めなくちゃダメよ」 「千鶴殿……」 「大事なのは弥彦さんがどうしたいか、でしょ?」 「…………」 どうしたい? 阪本達に会ってどうする? あの頃の日々に戻れるとは思えない。 だが、それでも―― 「某は……」 「待ちなッ!」 吠えるような声が響き渡る。 振り返ると、怒りに満ちた天音の瞳が弥彦を捉えていた。  
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