反逆の秋稔

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「あ……ぁあ……」 あり得ない、と誰もが笑うかもしれない。 「何故……何故、あなたが……」 しかし、世の中には“それ”が本当に存在する。 勝機をゼロにさせ、戦う前からこちらの敗北を確定させる――そんな規格外な人間が存在した。 そして、その規格外な人間が今、まさに飛鷹の眼に映っていた。 「何故、あなたがここにいるんですッ! 森崎様ッ!」 黒いスーツを身にまとった彼女――森崎 千鶴。 別名“時ノ宮家の万能な母” その“万能”は人間の域を凌駕していた。 「ふふ、私ですか? 環ちゃんに会いに来ただけですよ」 頬に手を当てながら微笑む千鶴には、戦意や敵意といったものは感じなかった。 千鶴は飛鷹達やガーディアン一番隊と違って丸腰状態。 「ハハ……ハハハ……」 丸腰? だからなんだと飛鷹は乾いた笑みを溢す。 彼女に武器など必要ない。 その身一つで全てを成し遂げることができる。 そういう人物なのだ。 「つまり……環様を取り返しに来たと……?」 「会いに来ただけです」 「これはこれはとんだご冗談を……」 笑うしかない。 彼女を目にした瞬間、敗北は確定されたのだから。 相手が宗形だったらどれだけ良かったか。 だが、 「松本ッ! 古葉ッ!」 ここで無様に散るつもりはない。 「撃てぇえッ!」 万能だろうが相手は人間。 不死身でも無敵でもない。 だったら―― 「……え?」 突然、目の前にいたはずの千鶴が消え、飛鷹は目を見開く。 避ける動作や逃げる動作、隠れる動作など一切視認させることなく彼女は消えた。 「あらあら、物騒ですね」 その声は自分の真後ろで響いていた。  
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