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◇ ◇ ◇
立体駐車場の三階。
他の階同様に車が点々と並ぶ中、運転席に座る和馬はトランシーバーをじっと見つめた。
「うーん、飛鷹さんから連絡来ないねー」
相変わらずのんびりとした声音で言ったが、車内は緊迫した空気に満ちていた。
後部座席には松本と入れ替わった倉橋が忙しそうにパソコンのキーボードを叩き、その隣では七海が不安そうな表情を浮かべながら俯く。
七海とは対照的に、彼女の隣に座る環はただ静かに窓の外に視線を止めていた。
「今は飛鷹さんを信じるしかないだろ」
助手席に座る秋稔は麻酔銃を右手に持ちながら周囲を警戒する。
数分前、飛鷹が告げた作戦は秋稔達を逃がす為の陽動作戦。
“いいか、まず貴様達は三階で待機。松本は車から降り、二階で私と合流”
“倉橋は三階に上がり、一般人の小僧の車に乗って野神の捜索を続けろ”
“そして、私が合図を出したら車を出せ。一気に一階に降りてこの場から離脱しろ”
飛鷹達が囮となり、秋稔達をガーディアンから引き剥す作戦。
環を野神のところへ送り届けることが自分達の最終目的。
故に飛鷹は自らを囮にすることを選択した。
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