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「…………」
しかし、一向にトランシーバーから飛鷹の声が飛んでこない。
まさか、突破されたのだろうか?
秋稔の脳裏にはそんな不安が過る。
もし突破してきた場合は正面に見える二階から三階に上がる通路から駆け寄ってくるに違いない。
(……その時は覚悟を決めるしかないよな)
秋稔は目を閉じて静かに息を吐く。
冷静になれ、と心の中で繰り返し呟き、気持ちを落ち着かせたようとしたが――
突如響いた二発の銃声に目を見開く。
「っ!?」
同時に身体が右に傾いた。
否、傾いているのは車体だ。
「な、なに!?」
七海は慌てて顔を上げ、驚いた様子で辺りを見回すが、運転席に座っていた和馬はハッと何かに気付いて窓を開ける。
上半身を窓から出す形で和馬は車のタイヤを確認すると、右側の前輪と後輪の空気が漏れ、パンク状態となっていた。
「一体なにが――」
「楠木ッ!」
背後で秋稔の鋭い声が響き、和馬は「え?」とタイヤから視線を外し、顔を上げると……
「……そこまでだ」
和馬の眼の前にはガーディアン一番隊隊長――宗形が立っていた。
その手には白を基調とした拳銃が握られ、銃口は和馬の額を捉えていた。
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