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「…………」
和馬の見開いた目には、冷酷な眼差しで見下ろす宗形の姿が映る。
「捜しましたよ。秋稔様、環様」
和馬の額に拳銃を突きつけたまま宗形は視線を秋稔に移す。
「西園寺様のご命令によりお二人をお連れに参りました」
「なんで……」
言葉が出なかった。
音もなく、気配もなく、抵抗する間もなく現れた宗形に秋稔は驚愕する。
もし飛鷹達を突破してきたのなら、二階から三階に上がる通路から現れるはず。
その為、直前まで秋稔は通路を警戒していたが、誰の姿も見えなかった。
「簡単な話です」
秋稔の表情から心情を察して宗形が言葉を紡ぐ。
「飛鷹ならこう考えるでしょう。“警護対象者を三階に待機させ、自分達は二階で一番隊を迎え撃つ”と」
「……っ」
「“そして、隙が出来たら合図を送り、警護対象者を外へ逃がす”……そんなところですか」
こちらの陽動作戦を完璧に読まれていた。
「我々はそれを逆手にとっただけです。部下に飛鷹達を足止めさせ、私は非常階段から直接三階へと向かった。それだけの話です」
そして、車を使わせない為に拳銃でタイヤを狙撃し、隙が生じたところで接近、制圧。
「お喋りは以上です。さぁ、車から降りてもらえますか?」
状況は絶望の一言に尽きた。
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