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◇ ◇ ◇
同時刻。
「皆、無事だといいですな」
「…………」
上昇するエレベーターに乗っていたのは二人の男。
その内の一人、着物姿の大男は扉の上部にある階数表示を眺めていた。
「……アンタは誰の味方をするつもりだ?」
隣にいた男――小型の拳銃を右手に持った男は、視線を下に向けたまま大男に尋ねる。
「ふむ、そうですな……」
狭い空間には張り詰めた空気が漂っていたが、大男は穏やか声音で答える。
「まだ何とも言えませんな。事情が不明故に判断が難しいところです」
「……そうか」
「そちらは?」
「……悪いが俺は一択だ」
その声は氷柱のように冷たく、鋭く。
そして、エレベーターが三階に到着した音を告げると、男は顔を上げて扉の方に視線を移す。
開いた扉の向こう側には男女四人の姿があった。
「なっ……!」
その先頭にいた男――秋稔はこちらを見て酷く驚愕する。
対照的に大男の隣にいた男は冷酷な眼差しで見つめ返す。
「……遠くまで必死に逃げていたみたいだが」
右手に持っていた拳銃の先を逃亡者に向け、そして、引金に指をかけた。
「随分と追い詰められたな、相原」
「霧……島……っ」
目を見開く秋稔の瞳には自分とよく似た彼――霧島 恭也が映っていた。
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