第一章 嫁さん貰いました

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そいつは確かに今、俺の事を『婚約者』と言っていた。 俺にはそう聞こえたが、何でだろう・・・嬉しさよりも己の身の危険を激しく感じていた。 当のラスティは顔ギリギリの所を魔法が掠めて力無く地面へへたり込み失神していた。 魔法なんてこの村じゃ滅多にお目に掛かれない、多分生まれて初めての経験だったんじゃないだろうか。 ローブの女は周りを見渡し俺と目が合うとニッコリと微笑みながら此方へ近づいて来た。 俺は恐ろしさの余りその場から動けず、そいつが近づくのをただ黙って見ている事しか出来なかった。 「ねぇ、そこの貴方・・・。この村にティオって人がいる筈なんだけど・・・何処にいるか知らない?」 そいつは後ろのラスティを指差し、答えなければ同じ目に合わすぞと無言で俺を睨んで来た。 「し、知ってますが・・・ど、どうしてティオを探してるんですか?み、見つけた後は彼をどうするの?」 恐る恐る聞いてみると 「決まってるじゃない・・・。殺すのよ!お父様には彼は魔物に殺されてましたわって伝えますわ。いくらお父様の言葉でもこの私がたかが人間の男と結婚だなんて!・・・絶対に殺す!」 言い終わるや否やさらに黒いオーラを噴き出すこいつに俺は生まれて初めて自分の最後を感じていた。 こちらに気付き、顔を上げたラスティの口が微かに動くのを見て俺は最悪の事態を想像した。 「・・・ティ・・・オ・・・・・・逃げろ・・・」 バカ!?今その名前を出すな! 「ティオ?・・・へぇ、貴方がティオ・ブラントだったのね。ごめんなさい、会って間も無いですが私は貴方を殺さなければなりませんわ」 ローブの女はそう言うと左手を上げ、俺の顔の目の前に突き出すとその一点に大量の魔力が集めだした。
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