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意識して聞くまでもない予鈴が学校中に鳴り渡る。
それは授業開始の合図と共に解放される瞬間。
ナツメはほっと心の中で呟いた。
助かった、と。
「あーあ、鳴っちゃった」
机を覆うように囲んでいた数人の女子生徒らが残念そうに離れていく。
そんな彼女らを見送りながらナツメは小さく息を吐いて、待ち望んでいた時間がやってきたことに安堵していた。
疲れるな……。と心の中でひとりごちる。
朝から数人のクラスメイト達に似かよった質問攻めにあっていたのだから、そう思うのも無理もない。
「……ほんと、かんべんしてよ……」
新しいクラスに変わってから朝のこの光景などもう見慣れてしまった。
みんなどこから噂を聞きつけてくるのか、珍しい生物を見に来るみたいにしてナツメの側に寄ってくるのだ。ある話を聞きたいが為に。隣のクラスからもやってきたこともある。
どうして新学期そうそうこんな扱いを受けなければならないのか。
小声で愚痴を零しながらナツメは一限目の準備に取り掛かる。引き出しからペンケースを出してノートを探していたら。
「よー、ナツメ!!朝から大変だったなぁ!」
真後ろの席からふざけたような声が突っ込んできた。
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