祓い屋 上ノ段

第十五幕 九十九

「いぎゃﾞあﾞあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！」

「あﾞぁﾞあﾞあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！」

「出たァﾞァﾞァﾞァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ！！！」

「ウワァﾞアﾞアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッ！！！」

こちらがひっくり返ってしまいそうなくらいの大音量の絶叫。超音波みたいな凄まじい悲鳴をあげ、彼らはこの世の終わりだといわんばかりの絶望的な表情をして飛び上がり、円陣を一瞬にして崩し、広い和室の中を我先に我先にと逃げ惑い始めた。

『百鬼夜行』――。

その光景が歴史の教科書なんかでよく見かける有名な絵巻のそれと重なる。いや、今はそんな事はどうでもいいのだけれど。

いいのだけれども。

逆じゃないのか、この状況。

そんなことを思い浮かべる余裕が生じるくらい、ナツメは瞬時にして拍子抜けしてしまったのだ。

芝居なんかじゃない。目の前の彼らは本気で焦って、肉食獣に追われた小動物の如く必死に逃げ回っている。

こちらが一人に対してあちらは多勢。大勢で向かってこられたその時には、全てを投げ打ち逃げる覚悟を予めしていたナツメが、奇妙な姿形をした者達に悲鳴を浴びせられ、これ以上こちらに来るなと恐れられているのだ。

さて、こんなにもおかしな状況は今までにあっただろうか。