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「答えは……見つかった……?」
彼の言葉に少し間を開けて頷く。
「わたし……こんなになっちゃったけど、これからまた、いちから、はじめられるかなぁ……っ」
「うん。絶対できるさ…………、なんて言うのは生温い慰めになるから、ノーコメントで。此処から歩き出せるかは、君次第だから」
「は……は、……そういうと、おもったよ……」
弱々しく、それでも笑顔を取り戻したナツメの言った言葉に気を良くしたのか。
「……じゃあ。おれがなんで此処に来たか、本当の理由を教えてあげようか」
彼は小さく笑って、ナツメの右腕に何か取り付けた。
ひやっとしたものが手首に触る。
「……依頼の品を届けに来たのさ」
「い……らい……」
これは……、なにかと認識する前に、何度も叫び、泣き疲れたナツメは今度こそ本当に意識を失い、静かに倒れた。
その場に放置する程、彼は薄情ではないらしく、力の抜けたナツメの体を床に横たわらせ、汗で額に張り付いた前髪を掻き分けてやると。
「高くつくからね」
毎度あり――。にっこり笑って彼、春一は、倉庫の扉が蹴り破られる前に、入ってきた時と同じ方法で窓の縁に手を掛け、よじ登り、静かにその場から姿を消した。
第四幕へ続く――。
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