砂漠に落ちた少年

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 理由は分からないが、ポチは狙われている様だ。 少女はまるで漫画から飛び出したかのように、薄青いショートの髪を時折り陽に反射させ、ハルバートを豪快に振るう。  腕力に疑問を抱くが、今更驚いていても仕方ない。 「あのー……うちのペットを虐めないでくれますか?」  姿は目で追えないが、目の前で高速移動する少女に問い掛けてみた。 特に反応が無かった為、若干イラッとし始めた俺は、再度声を上げる。 「おいコラ! ポチ虐めんな! ペチャパイが!」 『あ”?』  ピタリと動きを止めた少女は、極道顔負けのメンチビームを飛ばしてきた。 「もっぺん言ってみて? ん?」  二重の大きな瞳は細くなり、不自然につり上がった口角。 いわゆるキラースマイル。 「いえ……その……ポチ虐めないで下さい」 「いや、そこじゃないよ? その後ね」 「――ペチャパイ」  豪ッッ――と、ハルバートが俺の足元に振り下ろされる。 鼻先をもれなく掠め、冷や汗所か紳士から聖水がこぼれ出しそうになった。 「――で?」 「すいませんでしたああああ!!」  THE・土下座。  産まれてから一番の美しさのそれを、全身全霊の謝罪と共に繰り出した。
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