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『あのー……』
きょろきょろと田舎者のように振る舞う俺へ、誰かが話掛けてくる。
「ん? 誰?」
振り返ると、ボロ布を繋ぎ合わせた服を着た赤い髪をした少年が、両手を差し出してきた。
――何だ? これは……
少年の掌を眺めながら、どうしたもんかと判断しかねる。
――分かった! 何か欲しいんだな!
「ほら」
ポケットに一枚だけ入っていた、某48人のグループのトレーディングカードを手渡した。
「何コレ……」
キラキラと輝くカードを珍しそうに眺めながら、少年は俺に問い掛ける。
「それはな、”まゆゆ”様だ。分かるな? 大事にしろよ?」
「…………いらね」
少年は眉を顰めた後、カードを地面に投げつけた。
更にその上から足で踏みつけ、グリグリと左右に捻じる。
「あああああっ! まゆゆ様がぁぁぁっ!! こんの糞ガキがぁぁぁぁっ!」
少年――もとい、糞ガキを掴み上げ、俺は続けて叫ぶ。
「きっさままま! 許さんぞぉぉぉぉ!」
俺の怒りメーターはレッドゾーンである。
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