初めての牧場づくり

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 馬車の販売店はそれなりに広かった。 展示されている馬車の荷台が、かなりのスペースを要するからだろう。 「いやいやいやいや……」  思わず流れた冷や汗。 問題は値段にあった。 「200万ポルもすんの? これなんてエコカー?」  ギャッツとミシェルは、裏で飼われている馬と戯れながら、無邪気にはしゃいでいる。 「子供は平和でいいな……」  荷台を見ながらブツブツ呟いていると、店主がこちらへ歩み寄る。 何だかうさんくさい風貌。 それを引き立てているのは、頭がパンチパーマで尚且つグラサンをしているからだろう。 ――マジもんやでぇ……  内心ガクガクブルブルしながらも、押し売りにあわないように平静を装う。 俺の心がじわじわと削られているのは言う間でも無い。 「やあ! 何かお探しかいっ!?」  見た目に反し、やけに爽やかな言葉で話しかけられた。 「いや……荷台をちょっと……」 「そうなんだ! ははっ。僕で良ければ相談にのるよ?」 ――いやに爽やかだな……  こいつもアレだ。 油断させておいてガブリチュウするつもりだ。 ――だが俺には通じない! 「騙されるものかぁぁぁぁぁっ!!」 「え……」 「そうやって怪しい花瓶とか偽まゆゆ様カードとかを売りつけるつもりだろう!?」 「ははっ! 面白い人だね。君!」 「爽やかぶるなぁぁぁっ! 極道の使いめ!!」  俺の言葉に、ため息を吐いた店員は、徐にグラサンへ手を掛けた。 そして、それを外しメンチビームが飛んでくる――かに思えた。
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