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「…意味が…ない、だと?」
高木が拳をギュッと
握り締めた。
「そうよ」
「例え、
お前がそうだったとしても
俺は…俺は…」
「貴方の愛って、何?」
小夜子が笑うのを止めて
高木の瞳を覗きこむ。
「それは…
本気で人を好きになる事。
俺には家族がいる。
でも妻に愛情なんて
もはや無い。
愛してるのは…
小夜子。お前だけだよ」
しばらく
沈黙が続いた後に
「わかったわ」
小夜子が短く呟くと
「じゃあ、今夜。
またあそこに来てくれないか?」
「あそこ?」
「ああ。
2人で行った
シティホテルに…
来てくれないか?頼む」
首を少し傾げ
何か考えてる様子の
小夜子に高木が哀願すると
「時間は?」
小夜子が聞き返す。
「小夜子が来れる時間で
構わない」
「…わかったわ」
ちらっと部屋の時計に
視線を走らせた後に
「21時に、行くわ」
小夜子が答えた。
「ああ、良かった…」
高木がホッとした顔を浮かべ
初めて笑顔を見せた。
「じゃあ」
物理室から出ようとする
小夜子に
「待ってる」
高木が明るい声を
投げ掛けた。
それには答えず
静かに部屋から出ていった。
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