【S】

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「何?いきなり こんな場所に呼び出したりして」 夕暮れの屋上。 地平線にオレンジ色の 太陽がゆっくりと沈んでゆく。 「ずっと前から。 お前の事が好きで…」 茶髪にピアス。 わざと下げた ズボンのポケットに 手をつっこみながら この高校の生徒だろう。 目の前に立つ 女子高生にぶっきらぼうに 言った。 「…で?」 「は?」 冷たい返事に 一瞬、男子生徒がたじろぐ。 「わたしを好きだから、何?」 「何って…。 良ければ俺と付き合っ…」 「話はそれだけ?」 男子生徒の言葉を遮り 女子高生が屋上の出口に向かい ゆっくり歩き出した。 「おいっ!待てよっ!小夜子」 慌てて女子高生を追いかけ 肩を掴む。 「…離して。 もう用は済んだでしょ」 男の方へ 振り向きもせず 小夜子が手を振り払いながら 言い放つ。 「おいっ! まだ話は終わってないだろ? …ちょっ…おいっ!! 待てよっ!!小夜子っ!!」 ガシャン 男子生徒の言葉など まるで聞こえてない素振りで 小夜子は出口の向こう側へ 姿を消した。
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