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昭和四十年…夏
急にケンちゃんの転勤が決まったんだ。
「転勤先に着いたら和香に手紙を書くよ、手紙に連絡先書くから返事をくれよ?」
「………」
仕事なのだから仕方がない、……そう解ってはいても笑顔で送ってあげられる程、私は大人にはなれなかったんだ。
「和香? この星は何処に居ても一緒に見れるんだよ」
唇を噛みしめ俯いている私は、星を見上げる事さえ出来なかった。
「和香は可愛いな……」
ケンちゃんは涙を溢す私を引き寄せ、髪を撫でてくれたんだ。
「落ち着いたら必ず迎えに来る、和香?迎えに来るから、……」
その言葉を残しケンちゃんは東京へ行ってしまった。
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