冷え込む朝

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「そんなもんですかね、先生はその職員の方に会った事あるんですか?」 俺はダンボールを見つめながら尋ねた。 「ああ、俺もこの学校に赴任して4年だからな。お前らが入学してくる前に卒業したからちょうど入れ違いだ。優秀なやつでなー高卒で役所に就職して図書館の職員になったわけ。」 俺は先生の話を聞いて思わず関心してしまった。 高卒で就職して図書館の仕事をきっちりやりこなす卒業生に、ちょっとした憧れを抱いたくらいだ。 「いつか会ってみたいですね。」 「そのうち会えるさ、たまに図書室の様子を見に来るからな。」 先生は本を少しずつダンボールから取り出しながら少しうれしそうな顔をしていた。 先生とその人は仲が良かったんだろうか? 先生の表情は俺にそんな軽い疑問を植え付けたが、そんなことはすぐに忘れてしまった。 「この本は明日の委員会で皆で棚に整理するからな、覚悟しとけよー!」 本の中身に間違いがないが確認しながら先生少し声を張り上げながら言った。 その声は少し楽しそうで、先生も本が好きなんだなと思った。 先生は30歳でまだまだ見た目も若く見えるほうだが、 おっさんくさい話かたのせいで女子生徒にはあんまり人気がない。 でも俺はなんとなくその話し方に愛着があって学校の先生の中では一番好きな先生だ。
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