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カーテンから漏れ出す光が部屋を薄く照らす。場所は、どこにでもある一軒家の子供に与えられる自室。その中、勢い良くカーテンを開け薄笑を浮かべ言葉を喋る男がいた。
「時は満ちた・・・」
ソイツは、新品の制服に袖を通し身を包む。ブレザー、というやつだ。ネクタイを締め、一緒に顔も引き締まったような気がする。
「俺は高校生。そう、高校生!」
全く意味のない独り言を喋る。
階段を降り、居間に向かう。階段を降りたとき必然的に見える玄関を見てなぜかニヤつく。
「おはよう! 母さん、父さん!」
「あら、おはよう」
「おう」
ソイツは椅子をひき用意されていた食事に手をつける。見る限り軽い和食だ。
「はっはっは。なんか張り切ってるようだな、拓哉」
「俺は高校生、だからな」
――拓哉と呼ばれたこの少年。名は板谷 拓哉(いたや たくや)。今日晴れて高校生となる者だ。
容姿としては、まぁ特筆するものがないほどド普通というところだろう。
「後で晴れ姿をキッチリ見てやるからな!」
「あら、お父さんは来ないんでしょう?」
「いっけね! そうだった!」
夫婦漫才のようなやりとりを繰り広げる夫婦。それを何も感じることなく黙々と食事を続ける拓哉。
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