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そう思っていたら、前の扉から生徒が入ってきた。ソイツが入った瞬間、教室の空気は確かに変わっただろう。
ソイツは、イケメン。いや、ただのイケメンじゃない。朝、俺と衝突したあのイケメンだった。
「うわ・・・」
つい、嫌な声を漏らす。これが美少女ならば文句のないシチュエーションだったのだが。イケメンは俺の方は向かず、黒板に貼られている座席表を見に行く。
教室にいる女子のほとんどがチャリイケを見ている。チャリイケは自分の席を確認すると、席に向かおうとする。
どことなく俺のほうに向かっている気がするが、気のせい。俺に気づき手を振られたのは、まぁ気のせいじゃなかった。
「お、朝の!」
「よぉ朝の」
お互いに朝の、という認識なのでそういった台詞をする。すると、チャリイケは不思議そうに俺を見る。
「? なに?」
「いや、なんでそこに座ってんのかなーって」
指をさしてそう言った。あぁ?
「ここは俺の席だぜ?」
「え? いや、そんなはずは・・・。そう書いてあったぞ?」
そう言って黒板を指差す。俺は、その瞬間認めたくない事実を理解した。俺は静かに尋ねる。
「・・・お前、名を何て言う?」
「お、名前か? そういえば朝言ってなかったな」
チャリイケは咳払いをすると、爽やかな声で名乗る。
「相沢 翔太だ。よろしく」
「板谷 拓哉だ、こんちくしょォォォおお!!!」
俺は余りの悔しさに涙をしながら急いで席を移動する。一個後ろなのは間違いなさそうだ。
が。
「畜生・・・。俺の腕だけじゃ飽き足らず皆勤まで奪うか、このイケメンは・・・!」
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