高校デビューなう

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 まだ慣れていない学級は、チャイムが鳴り終わっても驚く程静かで皆担任の言葉を待っていた。  さて、この担任なんだが。まぁ普通の中年男性。家族のために頑張っている雰囲気がある。無精髭があるね。いい先生だといいんだが。 「えー、皆さん入学おめでとう! 私は担任の小柳 亮太です。よろしく! さて、早速これから入学式の流れを説明します」  話し方は気さくで、結構馴染みやすそうな印象を受けた。やるときはやる男、か。  小柳の説明を聞くと、まぁなんでもない普通の入学式。体育館に入場して、式をして教室でホームルームが終わったら今日は帰宅という流れだ。 「では、早速入場しますので廊下に出席番号順に整列してください」  その言葉が放たれると、皆黙って廊下へ行く。いや、何人かはひっそりと喋っているが。そしてコイツも。 「高校の入学式って新鮮だよな。皆知らない顔だし」 「そーだな」  相沢はもう俺が友達のように接してくる。コイツにとっては友達という感覚かもしれんが、今日出会った奴と馴れ合うほど俺のコミュ力は高くない。後、廊下に並んで相沢が一際輝いてる。女子が全員見てる。もうね、これだから顔面格差社会は嫌になる。  さてさて、入学式の真っ只中。ついに新入生代表の挨拶が来た。入試点トップの者のみが許可される挨拶。俺の予想だと容姿端麗、文武両道、才色兼備な女子が来ると胸を膨らませる。ちなみに俺が学年トップじゃないのは言うまでもない。 『――続きまして、新入生挨拶』  マイクを通じて先生の声が体育館に響く。  キタ! キタコレ! さぁ、どんな可愛い娘なんだ!  『新入生代表、相沢翔太』 「はい!!」 「はい?」  なぜか俺から一番の座を寝取りやがったクソイケメンの相沢が起立する。なに立ってんのお前? 相沢翔太って同姓同名がいるんだろ? ・・・。いや、現実逃避はよそう。相沢翔太とはアイツのことだ。  アイツは立ち上がった瞬間驚いている俺に横目でウィンクした。うわ。そして壇上にアイツが立った瞬間、確かに女子の目つきが変わった。男子も『え? 何アイツ。俺らと同じ生き物?』という雰囲気が伝わる。
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