一章目

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相手はただ、黙ってこちらを見つめてくるだけだった。 どうやら、口で言ってもわからないらしい。 一歩、踏み出す。 俺はこの目の前のストーカーを強制退場させようと、その手をつかもうとした。 ーーそう、つかもうとした。 「なっ……?」 そのまま俺はバランスを崩して勢いよく教壇の後ろ、教室と教室とを隔てる壁に顔面をぶつけた。 俺がつかんだのは虚空。 つかもうとしたはずのストーカーの手は、つかむことができなかった。
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