一章目

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「はは、虫か……それにしては少し騒ぎすぎだな」 たかが虫で、と言った様子で先生は笑った。 「まぁ、疲れてるのかもしれんが……なにかあったらいつでも言いなさい」 声の調子を変え、真面目な様子でそう言うと、ポン、と先生は俺の肩を叩いた。 「……大丈夫です、なんも問題はないっすよ」 俺は先生の心配したような口調をはは、と笑い飛ばそうとしたが、自分で思っていたよりも俺の笑いには活力というものが不足しているようだった。 先生は、若干俺の心情を憂うかのようにこちらを見ると、すぐに適当なジェスチャーをとってその場を立ち去った。
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