一章目

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「バレたか」 わざとらしく肩をすくめて見せながら古島は言った。 内心でやれやれ、とつぶやいた……俺がこいつが剣道部に所属しているのを知っている、というのは、俺も剣道部に所属して『いた』からだ。 「もう俺は剣道部はやめてるよ、古島」 そう宣言するように言うと、今までただ笑っていただけの古島の表情が、途端に憂いを帯びたように見えた。 「……あぁ、うん」 ぎこちない、はっきりとしない口調での返答。 何を言いたいのか、というのは大体わかる。 俺が部活を途中でやめたことを非難しているのだろう。 だけれども、俺は古島の言葉に対して返すべき言葉を持ち合わせてはいなかった。 そのまま逃げだすような気持ちになりながら背を古島に向けて歩き、その場を後にした。
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