一章目

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古島を置いて歩き始めた俺は校門から校舎に入り、靴を履きかえて教室につく。 不思議な事に古島が追い付いてくることはなかった。わざと歩調を緩めたのかもしれない、と考えると、微かな罪悪感が胸の中で生まれた。 朝早くの教室には誰もいなかった。 けれども、幾つかのスポーツバックが机の上に置かれているのを見ると、何人かの生徒が既に朝練のため登校しているのだろう。 そう思って教室の窓からグラウンドを見やると、ユニフォームを着た選手たちが走っているのが見えた。野球部だろう。 鳥の鳴き声と人の気合が交差する。 俺は鳥の鳴き声だけが聞こえればいいのに、どうでもいいような気もしながら考えた。 本気でそう思っていた、というわけではない。 ――でも何故だか一瞬、本当に鳥の鳴き声しか聞こえなくなる。頭の中でそれしか聞こえない、反響し続けている―― 思わず顔をしかめる。耳がおかしくなってしまったのかと思って、両手で耳をふさいだ。
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