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 「よろしくお願いします」 本当に静かになった教室で、先生は授業を始めた。  先生の授業は、かわいらしいあだ名に反して、ひどく淡白だ。若い教師のように話し合いをむやみに促したりしないし、授業を断ち切って質問をするとひどく不機嫌になる。老教師によくある、見せつけるだけの講義だ。だから、生徒の半分は机に突っ伏してまぶたを閉じ、残りのおきている生徒も、ほとんどは虚ろに視線を泳がせている。授業を聞いているのは、おそらく私くらいしかいない。だから、先生の授業は静かで、とても地学室に似つかわしかった。他の教科のときは騒がしいクラスの誰も、この地学室の静かさを侵せないことが、私は嬉しかった。
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