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 授業が終わった後、先生のところにいく。先生はチョッキについた多様な色のチョークを払いながら、こちらを向いた。気づいていないのだろうか、右の袖口にはまだ、チョークがたくさんついていて、シャツの白をエキゾチックな模様に染めている。ところどころ、色が重なった部分があるが、色は透明ではなく、泥に近い、グロテスクなものである。 「先生」 というと 「はい」 と返ってくる。淡々として、しかし愚鈍な動物らしいところは、いつものたぬき先生である。 「さっきの、あれ、スペクトルっていうのがよく分からないんです。」 「というと」 「色が混ざってできるのが透明だなんて、ちょっと信じられなくて」 「しかし、そうなるんだよ、不思議にも」不思議にも、という言葉とは裏腹に、口調は淡白だ。 「でも」 納得できなかった。スペクトルの話も、それを話したのが穴ぐらのたぬき先生だということも。それを納得してしまったら、下品に笑っている、あのクラスメイトたちの群れに、私が負けてしまうような気がした。
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