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「でも、といわれてもね」
先生が、どうでもよさそうに言いながら、また鼻頭を掻く。背筋を幾分か曲げて、先ほどより心なし獣らしい。
「だって、例えば、ここはどんな時だって土色じゃありませんか。授業中も、私が一人でいるときも。それに、先生の袖口はチョークが混じって変な色をしているし、黒や白の雲母が混じっているはずのグラウンドは、そんなの無かったみたいに、砂色をしてるじゃないですか。」
変に興奮していた。自分が自分で無いような、わけの分からない頭の中を、クラスメイト達ののムラのある足音が、ぎしぎしと、軋みながら回っている。熱くなった耳を、扇風機の対流させた風が、ゆっくりと冷やしていった。
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