2/12
前へ
/167ページ
次へ
撮影2日目。 挨拶もしていないけど、私はユキさんと同じ絵の中に入る。 松谷くんと撮るよりも近い距離かもしれない。 傍目から見れば親友のようにって里村さんが注文くれるから。 「どうやってあのデザイナー落としたの?」 なんて撮られながら私の耳元に聞いてくれる。 表情は笑顔でカメラ目線。 しっかりポーズつくりながら。 …プロだ。 「モデルのオーディションから逃げようとしたら捕まっただけです」 私はありのままに答えたけど、そんなはずはないと思われている。 「昨日の夜、仕掛けてみたんだけどカタイの。まぁ、あのアキラだし、簡単にはいかないのはわかっていたんだけど。なんかコツあったりする?」 仕掛ける…って、やっぱりそういうこと…だよね? どこかカナちゃんと似ている気がする。 里村さんは私にはキスもハグも簡単にしてくれる気がする。 コツなんてわかんない。 気に入ってもらうこと? なんて考えていると撮影のこと忘れてしまっていた。 「ピカル、また唇、半開き。そのマヌケ顔はいらないから」 なんて里村さんが言って、まわりはいつものことのように笑う。 マヌケとは失礼なっ。 …マヌケな顔してたと思うけど。 私は表情を決めて、ユキさんに合わせるようなポーズをとる。 それでも主役は私となれるように、ユキさんより印象的であるように、がんばってみる。 見た目なら、もちろんユキさんの容姿のほうが目をひくだろうけど、ファニーフェイスはファニーフェイスでおどけてみせたりピエロになればいい。 でもたまにはかわいく撮ってもらいたいかも。 なんて気取ってみると里村さんにネタにされて笑われる。 悔しい。 確かにユキさんと並ぶと見劣りしているだろうなぁとは思う。 真っ白な肌、大きな目と綺麗な背筋。 腕も足も首も細くて綺麗。 長い髪もさらさらしてる。 花がある。 作り込まれた花。 「ねぇ?アキラを落とす方法教えてよ。さっきからアキラ、あなたにばっかりかまってる」 「どうして里村さんのことアキラって呼ぶんですか?」 「モデル名。教えてって言ってるでしょ」 「里村さんのモデル時代見てみたいかもです」 「…ちょっと。それってわざと?」 ユキさんは私を睨んで里村さんに注意された。 わざと。 かまってもらえてよかったじゃないか。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加