132人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
初めて誰かを好きになったような気がする。
気がつくと目は彼の姿ばかりを追っていて、ふとしたときに彼の姿を見つける。
また今日も姿を見ることができた。
なんていうことだけで喜んで憧れているだけだった。
どこがいい?って、私の目にはかっこよく見える。
顔も背も体格も。
性格は話したこともないからよく知らない。
だけど、友達たくさんいて、いつも笑顔で明るくて楽しそうな人。
なんかいいなぁって思っていた。
見られるだけで本当にうれしかった。
誰にも言わない、私だけの恋心。
だけど。
「ヒカル、まだ帰らないの?」
隣の家の幼なじみの前田カナミにそんな声をかけられて、私は日誌から顔を上げる。
「日直だったから。もう少し」
残りたいわけじゃないけど、終わりそうにない。
私はカナちゃんにそう言葉を返す。
日直なんてなくてもいいように思う。
こんな学級日誌なんて誰が見ているのか。
担任のお手伝いってところなのかもしれないけど、みんながみんな回ってきた日誌をちゃんと書いているわけでもない。
意味ないと思う。
「ふーん。ヒカルにしてはめずらしく残ってると思ったら」
カナちゃんは私の席に近づいてきて、私の書いている日誌を覗き込むように見る。
あと少し…と思ってシャーペンを滑らせていたら。
「カナミ」
なんてカナちゃんを呼ぶ男の子の声が聞こえた。
私は釣られるように顔をあげて、そこにいつも見ているだけのクラスも違うあの彼の姿を見る。
「あ、ヒロヤ。ちょっと待って。すぐ帰る」
カナちゃんは彼に親しげに言葉を返して、私のほうを見て笑顔で。
「ヒカルも興味あったよね、ヒロヤのこと。紹介してあげよっか?」
意味がすぐに理解できなかった。
興味…あったって、言ってもいないのに。
紹介?
何も答えられずにただカナちゃんを見ていた。
「ヒロヤとつきあってるの。ヒカルがいつも見ていたから、なんか気になって声かけたら、そういうことになった」
カナちゃんは少し恥ずかしそうにうれしそうにそんな報告を私にくれた。
意味…わかんない。
最初のコメントを投稿しよう!