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「…泣いてしまってもですか?」
「いいんじゃない?機会があれば緒方をモデルに引き込んで撮るつもりでメンズも用意したし」
「…緒方くんはモデルじゃないですよ?」
「となることも考えてメンズモデルも用意した。できればピカルにはモデルのほうに恋してほしい」
いえ、それ、してほしいと言われてできることじゃないです。
というか他のモデル使うなんて初耳です。
「ついでにもう一人、女の子用意してみた。ライバル意識燃やして、しっかりやらないと、全部、もう一人の子にとられると思ってね」
…すでにとられてると思います。
もう終わってると思います。
どうしよう。
モデルじゃなくなったら、服を縫うお仕事でもまわしてくれるだろうか。
里村さんの別荘は雪の世界の中にあった。
暖炉なんて初めて見た。
全体的にカントリー調でかわいい家。
というか大きなお屋敷だ。
着いて早速着替えて、メイクされて。
髪を整えるように切られる。
なんてしていると、先に着いていたモデルの男の子が近寄ってきた。
レンくんと同じか少し上っぽい。
かっこいい人だ。
「松谷航です。よろしく、ピカちゃん」
なんて笑顔で自己紹介をくれた。
「よろしくお願いします」
「俺、ピカちゃんと同い年だから。敬語いらないよ」
「…年上かと思いました」
松谷さんは笑ってくれる。
「もう一人、ユキってモデルがいるんだけど、それも同い年だから。そういう限定で俺もユキも里村さんに集められたってところ。受験生だっていうのにね。ま、俺はエスカレーターだけど」
そういう限定…。
里村さんの狙いが私に合わせたもののような気がする。
…もうかえてしまっていいんじゃないだろうか。
気がつくと半年近くもモデルやらせてもらってる。
そんなにたいしたことなにもできていないのに、かわいがってもらってる。
がんばりたいのに…。
扉が開いてそっちを見ると、緒方くんと女の子が入ってくるところだった。
白くてかわいい美人な女の子。
緒方くんと仲良く話してる。
…がんばりたいのに、笑えそうにない。
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