132人が本棚に入れています
本棚に追加
外が真っ暗になってくると雪が降り始めた。
マグカップを両手で持って、温かいミルクティーを飲みながら、ぼんやりと眺める。
外はかなり寒そう。
なんて思っていたら、シャッターを切る音。
また和哉さんかなと思うと、緒方くんだった。
久しぶりに撮ってもらった気がする。
「何してるの?」
「ぼーっとしてた」
「疲れた?」
「ちょっとだけ」
私が答えている間にも緒方くんはシャッターを切る。
緒方くんの中から、ユキさんとの恋愛を忘れさせるような子になりたい。
なんて傲慢?
何度、フラれれば私は気がすむんだろう。
なんて思って小さく笑った。
何度もシャッターを切ってくれるから、私は緒方くんのカメラの前に手をかざす。
「もうだめ。私、パジャマ。ノーメイク。モデルのすっぴん撮っちゃだめ。そんなに撮りたいの?」
「…なくしたから。撮りたかった」
緒方くんはカメラをおろしてくれる。
…私の手元にあるんだけど。
私の気持ち、ころころ転がされちゃう。
緒方くんはずるいなぁと思う。
友達にしかなってくれる気ないのに。
そんなんだから諦められないって気がつくべきだ。
だって…緒方くんに撮ってもらえるのが一番うれしい。
その目が私を見てくれているって思うから。
「前はずっとすっぴんだったし、よくない?もうちょっと」
緒方くんはまたカメラを構えて、私はレンズから顔を逸らす。
「こっち向いて笑って。俺、ヒカルの笑ってる顔が一番好き」
簡単に言ってくれちゃう。
私がどんな気持ちになるかわかってない。
椅子に足を乗せて、膝に顔を埋めた。
「なんでヒカルって呼ぶの?ピカって呼んでたよね?」
「俺だけが呼んでたのに、まわりみんな呼ぶようになったから」
「ヒカルって西脇くんが呼ぶ」
「…そうだけど。西脇と仲良くするのやめる気ない?男友達、俺だけでよくない?」
変な独占欲。
彼女にしてくれるつもりもないくせに。
「…松谷くんとも仲良くなってやる」
「もうプレイガールやめようって。しかもヒカルの相手、男前ばっかり」
変な嫉妬。
だけどうれしいなんて思ってしまう私。
…ねぇ?今、泣いちゃったから、撮っちゃだめだよ?
最初のコメントを投稿しよう!