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       どうやら脱臼したらしい。  少年の体を無理に引っ張りあげようとしすぎたのと、最後の最後、少年が岩場から足を踏み外した時に、ガクンとかかった落下の勢い。そして重み。あれがいけなかった。  右肩の付け根はもちろん、上半身全体が燃えるように痛い。だが実際のところは、全身で痛くないところは無いといってもよかった。  唯一の慰めは先刻から霧のように降りだした細い小雨だ。火かき棒を押し当てたように灼けるあちこちからの激痛を、わずかなりとも冷まし、和らげてくれているような気がして、今はありがたかった。 「なんで、こんなところにいたのよ」  少し離れたところに転がっていた少年が、目だけを動かして和美を見上げた。  ふたりともがこうして助かったことは、奇跡のように思えた。  落ちていく間に自分が何をしていたのか、まったく覚えていない。ただ、必死に何かをつかもうとしていたような、気はする。  それが少年のシャツだったのか、はたまた別の物だったのかはわからないが、両手の手のひらがびっくりするほど血まみれになっていたから、そのどちらもだったのかもしれない。
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