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 ところがこれが2年になると、上下の差が心持ち狭まって、去年はヒイヒイと言っていた者たちの顔にもいくぶん慣れた表情が浮かぶようになる。  それなのに、だ。  和美の視線の先で、一人だけ無茶な腹筋をやっている男子生徒がいた。  今日が初めてというわけでもない。またかと思いつつも、気になって仕方がない。  和美は周りの生徒たちより一足先に背筋の筋トレへと移りながら、その男子生徒の様子を窺い続けた。  身体をねじりながらやる腹筋を左右交互に20セットやるというのが、この時間に与えられた課題だった。  ところがその男子生徒は、和美の見た限りでは、まだ5セットすらも終わらせた気配がない。  最初の10回ほどは威勢良くやっていたのだ。  威勢良く、というのは正しくないかもしれない。どちらかというと、闇雲に、だった。  なぜあんな闇雲なやりかたで練習するのか。  筋トレは筋肉は痛め付けてこそ、という面もあるが、痛め付け方には重々気をつけなければならない。やり方を間違えれば、即、故障に繋がるからだ。  少年のあんなやりかたではただ身体を傷めるだけだ。  そして無茶なペースでやるから――ほら、今日ももたない。  もうこれ以上たった一度も持ち上がらない、という様子でマットに伸びた少年を見て、和美は今度こそ大きく溜息をついた。  不器用なのだ。見ていてイライラするほど要領が悪い。  苛立つならば見なければいいだけの話だ。  だが、その男子生徒の、和美から見ても幼さを残しているように見える白い顔が、滝のような汗をしたたらせ真剣そのものといった表情で、おそらくは思い通りにならないのだろう自分の身体ともどかしげに戦っている姿を見ていると、なぜか目が離せなくなる。  ニナイゼンジ。  少年のその風変わりな名を、和美は口の中で呟く。
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