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      「明日、屋外演習を行う」  教官から唐突に聞かされたのはその授業の終わりの時だった。  その上、教官が「普段よりもやや規模の大きな演習になる。各自、装備には重々留意するように」などと付け足したものだから、教室内の空気は一気に騒然となった。  屋外での実技演習となれば普段の授業とは勝手が違ってくる。クラス中が、プロテクターやブーツなど明日までに支度しなければならない物の手入れがまだ済んでいないだとか、購入していないものがあるだとか言い合ってザワついている中、しかし和美は別のことを考えていた。  演習の概要から考えて、場所は学院の裏手にある丘陵一帯だろう。  丘陵とはいうが、地形の変化にはなかなかに富んでいて、なだらかに開けた場所もあれば切り立った崖もある。  第二次世界大戦中に作られた防空壕などもそこここにあって、いずれ高学年になってからの演習ではそのような場所も広範囲に使うようになるとの噂を前々から聞いていた。  和美としてはこれまでの小規模演習でも何度か歩いたことがある場所ではあった。  だが、熟知からは程遠い。  ポイントを落とすわけにはいかなかった。  教官たちの帳簿に書き込まれるはずの、ポイントを。  和美にはやらなければならないことがあった。      
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