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歩きづらさを訴える足首を下草や落ち積もった枝葉に深く潜らせながら、放課後、和美は丘陵を登っていた。
つい先ほどまでは勾配も緩やかで足元もそう悪くはなかったのだ。
だが、丘陵の北側、日の翳る裏手に回ったとたん、勝手が変わった。
夕べ降った雨がまだ山肌に残っているようでやたらと滑る。
地形の事前リサーチをすることが悪いとは思わなかったが、教官たちに見られるのは何となく避けたかった。だから、敢えて獣道を選んだ。
それが果たしてて良かったのか悪かったのか――いや、悪かったのだろう。急勾配を登るのに頼りとなる枝や幹には事欠かなかったが、いかんせん足場が悪すぎる。
回れ右をして別の道から攻めたいところだったが、数歩下ろうと試みるたびに足が滑ってヒヤリとさせられた。もはや後戻りすること自体が危険に思えた。
山肌が乾いているか濡れているかでこんなにも足元の都合が変わってくるものなのかと内心愕然としながらも、このまま地形を把握しつつ山の周囲を巡って再び表側に出られれば、と、ただそれだけを念じて、和美は歩き続けた。
そして、少女は、少年に出会ったのだ。
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