プロローグ

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プロローグ

「はぁはぁ……はぁ、……なんなんだよ!」 和磨は息をきらせながらも懸命に廊下を走っていた。時折廊下ですれ違う小さな悲鳴に心の中では悪いと思いながらも足を止めることなく、人の合間を縫って進んで行く。 ーーもうなんでこんなことになるんだ! と、悪態をつきながらも階段を駆け降りて行き、渡り廊下にでた。 (大悟と渉は大丈夫なのか? 捕まってないか? ……いや、あいつらなら大丈夫か。俺が捕まってないんだ。そう簡単に捕まりはしないはずだ) 和磨はそっとブレザーの背中の部分に着込んで隠している“それ”に触れると同時に、小さく眉間に皺を寄せて心の中でため息をついた。 事の発端は放課後の教室、大悟が人目も気にせず包を開けてしまったのだ。それはもちろん高校に持ってきてはいけない代物であり、見つかったら没収。目の前で見ていた和磨たちも生徒指導室でありがたい説教をもらうことだろう。 それを運悪く、教室にいた風紀委員がその出来事を見てしまい、大悟達に言われるがままに逃げることになった。 そしてその物は今、和磨の背中に隠されている。隠しているせいで走る動きが不自然で走り難いのだが、そんなことを言っている暇はない。
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